2007/03/13
何事にもルールがある。国だろうが会社だろうが学校だろうが、人の集まるところにはルールがある。小学生だって知っていることだ。
では、この世界そのものを成り立たせている、根本の「ルール」に気付いている人間は、果たして地球上に何人いるのだろう?

吊り革に掴まりながら、私はそんなことを考えていた。地下鉄は規則的な音を立てて暗闇を進んでいる。目の前には七人がけの長い椅子があり、きっちり七人の人間が、まるで丁寧に箱詰めされたかのように、隙間なく座っていた。
仕事帰りのサラリーマン、男子高校生、フリーターらしき若者、おばさん、老人、女子高生、そして再び、サラリーマン。
彼らは、携帯の画面を見つめたり、化粧を直したり、ヘッドホンで音楽を聴いたり、各自、好き勝手なことをしていた。
とりあえずこいつらは誰一人、世界の「ルール」に気付いてないな。
私はそう思うと、優越感から吹き出しそうになった。愚かなやつらだ。「ルール」も知らず生きていて、一体何が楽しいのだろう。こいつらは無知だ。そしてあまりにも無知であるがゆえに、自分が無知だということさえ知らないのだ。
彼らがもし「ルール」に気付いているのなら、焦って座席を立つはずなのだ。だって、この並びは明らかに……

ほくそ笑みながら視線を右にやる。女性誌の吊り広告が目に入った。春物大特集なんて銘打った見出しがあり、女性モデルが笑っていた。テレビをあまり見ない私でも知っている顔だった。蛯原友里。エビちゃん、なんて呼ばれている女の子だ。
果たしてこの子は、「ルール」を知っているだろうか?
どうだろうな、きっと知らないに違いない。この「ルール」は本当にごく一部の人間しか知らないことなのだ。芸能人というのも確かに選ばれた少数の人間ではあるのだろうが、それでも「ルール」を知っている人間の数と比べると……
そんなことを思いながら、今度は視線を左にやる。私は目を見張った。左にも吊り広告がある。ペットボトルのお茶についての広告で、端正な顔立ちの歌舞伎役者が起用されていた。それは、市川海老蔵だった。
私は自分の身体がガタガタと震え出すのが分かった。
「ルール」が適用される!
私は今、知らず知らず、「ルール」の適用範囲内に入ってしまっていたのだ。分厚いコートの下で、大量の汗が流れ出しているのが分かった。突如として訪れた緊急事態に、脳も身体もうまく対応できない。
このままでは私は、エビになってしまう!

世界の根本を統べる「ルール」はオセロだ。黒と黒に挟まれると、白は黒になる。白と白に挟まれると、黒は白になる。そして今、私は蛯原友里と市川海老蔵に挟まれ、一匹のエビになろうとしている。哺乳類として生きてきた二十数年に別れを告げ、これからは魚介類として、海の幸として、しがない一匹のシュリンプとして、第二の人生を歩もうとしている。
心なしか背骨が曲がり始めた気がする。
まっすぐ立つことができない。自然と体勢が前のめりになっていく。身体がエビに近付いてきているのだ。
肌は、私の肌はどうなっている。おぼつかない手つきで自らの手のひらに触れる。固い、固い気がする。甲殻類に触れたときの手触りだ。さっきまでの柔らかな肉はすでにそこにはない。
ああ、参った、心まで変わっていくのが分かる、人としての心がエビとしての心に喰われていく。
電車がスピードを落とす。駅員の声がする。「新大阪、新大阪」駅員は抑揚のない口調で繰り返す。ちがう私は新大阪になんて用はない。心の底から沸き上がる衝動、ああ、なんだかもう、
今すぐ伊勢に行きたい!
(松岡)
では、この世界そのものを成り立たせている、根本の「ルール」に気付いている人間は、果たして地球上に何人いるのだろう?
吊り革に掴まりながら、私はそんなことを考えていた。地下鉄は規則的な音を立てて暗闇を進んでいる。目の前には七人がけの長い椅子があり、きっちり七人の人間が、まるで丁寧に箱詰めされたかのように、隙間なく座っていた。
仕事帰りのサラリーマン、男子高校生、フリーターらしき若者、おばさん、老人、女子高生、そして再び、サラリーマン。
彼らは、携帯の画面を見つめたり、化粧を直したり、ヘッドホンで音楽を聴いたり、各自、好き勝手なことをしていた。
とりあえずこいつらは誰一人、世界の「ルール」に気付いてないな。
私はそう思うと、優越感から吹き出しそうになった。愚かなやつらだ。「ルール」も知らず生きていて、一体何が楽しいのだろう。こいつらは無知だ。そしてあまりにも無知であるがゆえに、自分が無知だということさえ知らないのだ。
彼らがもし「ルール」に気付いているのなら、焦って座席を立つはずなのだ。だって、この並びは明らかに……
ほくそ笑みながら視線を右にやる。女性誌の吊り広告が目に入った。春物大特集なんて銘打った見出しがあり、女性モデルが笑っていた。テレビをあまり見ない私でも知っている顔だった。蛯原友里。エビちゃん、なんて呼ばれている女の子だ。
果たしてこの子は、「ルール」を知っているだろうか?
どうだろうな、きっと知らないに違いない。この「ルール」は本当にごく一部の人間しか知らないことなのだ。芸能人というのも確かに選ばれた少数の人間ではあるのだろうが、それでも「ルール」を知っている人間の数と比べると……
そんなことを思いながら、今度は視線を左にやる。私は目を見張った。左にも吊り広告がある。ペットボトルのお茶についての広告で、端正な顔立ちの歌舞伎役者が起用されていた。それは、市川海老蔵だった。
私は自分の身体がガタガタと震え出すのが分かった。
「ルール」が適用される!
私は今、知らず知らず、「ルール」の適用範囲内に入ってしまっていたのだ。分厚いコートの下で、大量の汗が流れ出しているのが分かった。突如として訪れた緊急事態に、脳も身体もうまく対応できない。
このままでは私は、エビになってしまう!
世界の根本を統べる「ルール」はオセロだ。黒と黒に挟まれると、白は黒になる。白と白に挟まれると、黒は白になる。そして今、私は蛯原友里と市川海老蔵に挟まれ、一匹のエビになろうとしている。哺乳類として生きてきた二十数年に別れを告げ、これからは魚介類として、海の幸として、しがない一匹のシュリンプとして、第二の人生を歩もうとしている。
心なしか背骨が曲がり始めた気がする。
まっすぐ立つことができない。自然と体勢が前のめりになっていく。身体がエビに近付いてきているのだ。
肌は、私の肌はどうなっている。おぼつかない手つきで自らの手のひらに触れる。固い、固い気がする。甲殻類に触れたときの手触りだ。さっきまでの柔らかな肉はすでにそこにはない。
ああ、参った、心まで変わっていくのが分かる、人としての心がエビとしての心に喰われていく。
電車がスピードを落とす。駅員の声がする。「新大阪、新大阪」駅員は抑揚のない口調で繰り返す。ちがう私は新大阪になんて用はない。心の底から沸き上がる衝動、ああ、なんだかもう、
今すぐ伊勢に行きたい!
(松岡)
コメント
昨夜の飲み会で非包茎二人に挟まれて
「包茎みっともないっすよね、俺?ムケてるってーw」
とか言ってた僕のちんこもルールに従ってくれるはず。
「包茎みっともないっすよね、俺?ムケてるってーw」
とか言ってた僕のちんこもルールに従ってくれるはず。
659 | | 2007/03/13 1:20 AM
秀逸ですね
660 | | 2007/03/13 2:14 AM
イ インパルス
661 | | 2007/03/13 7:12 AM
そのルール!
この前の『ナンボDEなんぼ』で黒田が言うてました!!!
ハゲとハゲに挟まれたのでハゲてました。
この前の『ナンボDEなんぼ』で黒田が言うてました!!!
ハゲとハゲに挟まれたのでハゲてました。
662 | | 2007/03/13 9:57 AM
なんかこれ気に入った
663 | | 2007/03/13 2:28 PM
その法則だと最初の7人全員サラリーマンになってまうやん。
664 | | 2007/03/13 2:45 PM
駄目だおもしろすぎる
665 | | 2007/03/13 4:18 PM
これなんかすごく好きだ
666 | | 2007/03/13 10:30 PM
>664
だからこいつらは気付いてないってこと。
だからこいつらは気付いてないってこと。
667 | | 2007/03/14 5:52 PM
地下鉄に大阪駅なんてありましたか?
671 | | 2007/03/15 10:15 PM
新大阪しかなかったような
672 | | 2007/03/15 11:42 PM
これは、おもろいなあ
674 | | 2007/03/16 12:48 AM
調べてみたら、地下鉄に大阪駅なんてないですね。
完全にミスでした。直しときました。
ご指摘どうもです。
完全にミスでした。直しときました。
ご指摘どうもです。
679 | 松岡 | 2007/03/16 1:23 PM
これを書いた人になら抱かれてもいいかな
680 | | 2007/03/16 4:57 PM
浮かすかすえかおうえうえうえうえううえうえうえうえうえうえうう
2095 | | 2008/01/11 2:11 PM
